父親は親権者になれるか
「男の親権問題」題目
1.「父親は親権者になれるか」
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行政書士明和事務所
行政書士 吉田 重信
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親権の取得については、依然として女性が非常に有利な状況下だ。
平成23年司法統計年報・家事編(第22表)によると、
母親が親権者となったケースが19.153組なのに対して、
父親が親権者になったケースは2.126組と、母親の10分の1程度の数となっている。
(監護者となった場合を含む)
かつては家庭裁判所の審判でも、
父親と母親と五分五分と言える程度の比率で親権の決定が行われていたこともあったようだ。
しかし、現在では7割程度が母親に親権を与える決定を下す傾向にある。
親権の結論を他人に委ねた人がよく勘違いを起こしやすいのが、
親権獲得を親としてのチャンピオンベルトかなにかと思い込んでしまうことだ。
実は他人が親権者の判断をする場合、親の主観はあまり関係ない。
親権者の決定は子にとっての利益と福祉という観点が大きく考慮される問題だから、
子にとってどちらがその後の生活を送る上で有用であるかが重要なんだ。
子への想いや愛情、離婚の責任がどちらにあるかという話よりも、
あくまで子の福祉が最優先だよ。
どちらがこれまで親として正しかったとか、どれほど子を愛しているだとか、
そういったものが主体となって判断されるわけじゃないんだ。
あくまで一般論だけれど、ね。
そういった理由から、離婚の原因が妻側にあるような場合であっても、
親権は妻に取られてしまうようなことも、実は少なくなかったりする。
この事実をもって、自分が父親として全否定されたと考えてしまう人もいるみたいだけれど、
前述の通り、これはあくまで子の今後の生活環境を考慮した上での結論。
そんなに自分に問題があったのかと思いつめる必要はない。
また、子自身の意思も、子がまだ幼すぎる場合はあまり重要視はされない。
なぜなら、まだ年齢が低い子の意思は、
事理弁識能力の低い未熟な意思表示と見られがちだからだ。
自分で自分の事を決めるのにも、それなりの「能力」が要求されるんだよ。
そして、その未熟な意思表示しかできないような子に対しては、
裁判所が後見的な立場になって、代わりに結論を出してあげようということになっている。
だから、どんなに子が「パパと一緒にいたい」と言っていたとしても、
それがそのまま考慮されるとは限らない。
子の今後の生活、福祉のためという大義の下、
裁判所は鬼になることだってある。
司法に結論を委ねるってのは、そういうことだよ。
男性にとっての親権問題は、基本的にはネガティブな情報しか目に付かないな。
ただ、子がある程度の年齢に達している場合には、
子の意思も重要な判断基準になるとは言われている。
子の心身の発達状況にもよるだろうけれど、
10歳程度でも、子の意思を尊重した決定が下されたケースもあるようだ。
ちなみに子が15歳以上である場合での親権者の決定や変更は、
家事事件手続法で子に意思陳述の機会を与えることが義務化されている。
そのくらいの年齢に達している場合は、子の意思も尊重されるみたいだね。
ただ、いずれにせよ、親権については親同士の意地ではなく、
子の利益を最優先で考慮すべき問題であるという認識は持っておいた方が良い。