妻との財産分与で不利にならないための知識

妻との財産分与で不利にならないための知識

 

「財産分与の法的知識」題目

1.「財産分与とは何か」

2.「財産分与の性質」

3.「財産分与の対象となるもの」

4.「財産分与の相場・割合」

 

書いた人

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行政書士明和事務所

行政書士 吉田 重信

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離婚時には、それまで夫婦で協力して築き、維持してきた財産を、
婚姻関係にあった相手方と分け合うことになります。

これを財産分与と言い、民法上では男女に区別なく離婚をした者の一方は、
その相手方に対して財産の分与を請求できるものとしております。

 

 

 

 

なお、この規定だけ見ると財産分与請求権は協議離婚した者のみに認められているように見えますが、
同771条が裁判上の離婚についても同規定を準用しております。

 

つまり離婚に至った場合は協議上であるか否かを問わず、
原則として請求権が認められるということです。

 

 

 

財産分与で主となる性質です。

婚姻継続中に取得した財産は名義が片方にあったとしても、
相手方も潜在的に共有持分を有すると解されておりますから、
離婚に至った際には、共有財産とされているものの清算をしなければなりません。

仮に妻が専業主婦であって、財産の構築に金銭的な面で貢献していなかったとしても同じことです。

 

これは財産分与の評価には金銭的な貢献度だけでなく、
その財産の構築や維持に対する妻の協力等も総合的に見て判断されるものと考えられているからです。

 

ちなみに、有責配偶者であったとしても財産分与の請求はできるものとされています。

財産分与の本質は婚姻中に築いた財産の清算ですから、
婚姻中に財産の増加に寄与していたのであれば、たとえ離婚に対して有責であったとしても、
その増加分の分与を受ける権利があると考えられているためです。

 

請求される側にとっては「盗人に追い銭」のような感覚でしょうが、
有責配偶者に対しては慰謝料の請求ができますので、
慰謝料相当分を相手の財産分与の取分から控除する形でまとめることも可能です。

 

 

慰謝料と財産分与は本来、その性質を異にするものですが、
実務上では財産分与に慰謝料を含めて処理する方法が採られる場合もあります。

この手法で行う場合は、どこまでが慰謝料で、
どこからが財産分与としての給付なのかが不明確になりがちです。

 

それが原因で後に事態が紛争化することも往々にしてあります。

 

このような形で財産分与を取りまとめる際には、
・離婚協議書等で給付の内訳を明確にしておくことによって、後々の紛争を予防することが可能です。

 

 

妻が専業主婦等で離婚後、生活が著しく不安定になるような場合には、
相手への援助金として財産分与の額が加算されることもあります。

ただ、これは離婚後に生活が安定するまでの保障としての給付ではなく、
あくまで一時的な扶養として行われる補充的な性質のものです。

なお、有責配偶者であっても、清算的財産分与は請求可能と前述しましたが、
扶養的財産分与の請求については信義則上、認められることは難しいでしょう。

判例においても、有責配偶者からの扶養的財産分与の請求部分に関しては、
請求そのものを否定するか、金額が制限される傾向にあるようです。

 

 

 

財産分与の対象となるものは、婚姻期間中に夫婦が協力し合って築いた財産のすべてです。

具体的には現金、預貯金、株式などの有価証券、不動産、自家用車等です。

 

不動産や株式などは、夫婦片方の名義になっていたとしても、
潜在的な共有財産とみなされることもあります。

 

退職金など、まだ実際に支払われていないものであっても、
将来支払われることがすでに確定しているものは分与の対象となる場合があります。

 

 

財産分与は預貯金や不動産等のプラスの資産だけでなく、
ローンや借金等のマイナスの財産(消極財産)も対象となります。

財産分与は婚姻中に築いた総資産の清算なのですから当然と言えば当然です。

 

ですから、金銭や住居など、プラスになるものだけをもらって、
借金だけは夫に押し付けるような形での財産分与は通常は認められません。
(もっとも、お互いに納得の上でそうしているのであれば別ですが・・・)

 

妻側に極端にプラスの資産を取得させたり、夫に債務のすべてを引き受けさせるような財産分与は、
仮に書面で協議の形を残していたとしても、公序良俗に反するものとして無効となる可能性も考えられます。

 

 

 

 

結婚前から所有している財産(貯蓄や借金等も含まれます)や、
結婚後であっても親などから相続や贈与によって個人的に手に入れた財産は、
特有財産といい、財産分与の対象となりません。

洋服や日用品など、日常的に単独で使用するものも同じく対象外ですが、
アクセサリー(宝石等)や時計等の高額なものについては、
その取得や維持に一方が寄与している場合は分与の対象となることに注意が必要です。

 

 

 

司法統計によると、財産分与で支払われる金額は400万円以下がその半数以上を締めているようです。

 

一般的な家庭であれば、資産と言えるものは住宅くらいしかないというのもザラですから、
このくらいの金額で落ち着くのはある意味、妥当と言えるのかもしれません。

メディア等では芸能人等の離婚で、慰謝料、財産分与数千万~数億円、なんていう情報が出たりしますが、
ああいった方たちはそもそも日頃の収入が我々一般人よりもかけ離れております。

メディアの情報はその莫大な収入を元に算定された金額ですから、
一般的な家庭の離婚事情に当てはめるには不釣合いな代物です。

 

よくこういった情報を鵜呑みにして莫大な金額を夫側に請求して、
無駄に問題を長期化させる非常識な方もいます。

しかし財産分与は婚姻時に取得した財産の範囲内で処理されるものですから、
法外な金額を請求されても怯える必要はありません。

 

 

潜在的な共有という考えを徹底するのであれば、
財産分与の分割割合は当然に2分の1であるものと考えられますが、
判例の多くは妻の貢献度(いわゆる寄与度)を認定して割合を算出する傾向にあります。

しっかり家庭を支えてきた妻と、家庭を顧みず、適当に生活を送ってきた妻とで、
財産貢献度が同等というのもおかしな話ですからね。

共稼ぎである場合や、家業への協力があった場合等では、
特別な事情の無い限り2分の1と認定される場合が多いようですが、
妻が専業主婦であるような場合には事例によっては3割程度まで割合が下がることもあります。

 

ただし、婚姻時の有責行為(不倫など)は財産の取得、維持への貢献度とは関係が無いものなので、
この割合算出の減額要件としては認められないものと考えるべきでしょう。

 

 

ワンポイント

財産分与の請求権は離婚の時から換算して2年で時効にかかります。

財産分与は女性だけのものではなく、男性側からも請求できるものですが、
この期間を過ぎるとこちらから請求が出来なくなります。

財産分与の内容については・離婚協議書といった形で書面に残しておくことで、
後々起こりうるトラブルを未然に防ぐことが出来ます。

 

 

財産分与に関するコラムはこちら

 妻との財産分与で後々揉めないためには

 財産分与で家や資産は処分すべきか

 

 

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