DVの事実を証拠で固めようとする戦略の危険性
男性がDVを受けていて、それを基に離婚をしたいと思った場合、
皆さんはどういったアプローチの仕方をするのがベターと考えるでしょうか。
相手と話し合おうとしたり、誰かに相談したり、
DVの程度によっては警察に対応を依頼したりするケースも昨今では珍しくなくなりましたね。
DVが事実である以上、その事実を記録に残しておくことは大切なことですし、
対外的な目や機関に問題を認知しておいてもらうことも先を見据えた上では重要な対応です。
各自、実情に合わせて無理のない形で足跡を残しておいて、
いざ、事実の信憑性が問われたりした際には毅然と対応できるようにしておきましょうね。
さて、最近では弊所での相談者の方からも、
事前に相談した弁護士から相手との会話の録音やDVの記録を残すように言われたという話を聞きます。
それを基に裁判官を説得するから、とにかく多く集めるように、と言われるそうです。
メディア上でも男性のDVは証拠の量で攻めるべき!と、はっきり言い切ってしまっている者も散見されますね。
あれは一体、ナニモノなのでしょうか。
というのも、
実はこういった日常的な行動を事細かに記録した証拠は裁判所も嫌悪する傾向があって、
そのような記録を基に戦略を立てて争っていくのは極めてリスキーだからなんだよね。
常に相手の問題行為を記録しようとしている様がそもそも普通じゃないから、
そんな異常行動の結果として提出された証拠は恣意性が内含しているものと見られがちだし。
こんな初歩的なことをスポイルしている状態で、
連中は一体、どうやって男性向けの戦略を立てているというのでしょうか。
社会的合理性を欠いた対応はかえって己の対外的な評価を縛る要因にもなり得ますから、
自縛に陥らないようにするためにも、もっと広い視野で依頼人の利益を検討しなければなりません。
実際に案件を多く捌いていれば、そういった危険予知は自然と身につくはずなのですが。
結局のところ、そういう場数を踏んでいない未熟さが、
とにかく数を集めればよろしいという安直な戦略(?)に至る要因ではないかと思います。
自分の依頼した弁護士にそのような戦略が有効なのだと誤ったレクチャーをされ、
その方針で争われてしまった方々は今、どうなっているんでしょうかね。
ちゃんと結果さえついてきているのならば良いのだけれど。
戦略的な思考で案件を進めてしまったからには、
争いの結果、それがどんな結論であったとしても受け入れなければならなくなります。
自ら卓について打ち始めてしまった以上、
決着後の交渉はかなり厳しいものになると思っておいた方が良いです。
結局、それで勝ち取れたのがFpic等の第三者の監視がついている状態での面会交流程度だったら、
それこそ人生を賭けて争った価値なんてないよなぁ。
もう結論が出ちゃった以上、
二度と普通には会えないという確約をもらっちゃったようなもんだし。
ちゃんと親子が普通に会える状態を作ってやれない戦略なんか、
クソの価値もないだろうが。
男性の離婚は勝利を掴もうなどという浅ましい考え方で出てくる戦略など、
所詮、思い付きレベルのものでしかないでしょう。
問題に対して争う、反論するという発想しかできないようでは、
かえって依頼人や家族を不幸にしかねないかと思います。
どこ見て仕事してんだか。
2022.05.08 wrote
行政書士 吉田 重信