本気で相手を許せないのなら慰謝料請求などするな
「男の慰謝料問題」題目
2.「本気で相手を許せないのなら慰謝料請求などするな」
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書いた人
離婚・家庭問題はお任せください
行政書士明和事務所
行政書士 吉田 重信
秀和システム様より、本を出版しております
「プロが本音で書いた男のための離婚の本」
慰謝料は請求するのが必ずしも正しいとは限らない。
相手が言い逃れできないレベルの証拠が残っていて、
どうしても許せないような事情がある場合は、まぁ、仕方がないだろう。
そういった事例での請求についてまで否定するつもりはない。
ただ、男の場合、そこまで単純な構図では済まないこともある。
相手が開き直っている場合もあれば、証拠が乏しいような場合もあるだろう。
まぁ、ここまでなら、よくある話だ。
ただ、ケースによっては相手が・偽のDV被害なんかを持ち出して、
逆に慰謝料を請求されてしまうような場合だってある。
だから、自分が請求できる立場だからといって、
安易に請求に走ったりするのは早計だ。
そこにそれだけを賭ける価値があるのか、請求をする前によく考えた方が良い。
それともう一つ、注意しておかなければならない問題がある。
それは慰謝料請求をしたことによって、
かえって相手に舐められたり、安心を与えてしまうことにもなりかねない、ということだ。
慰謝料は所詮、金による責任の追及にすぎない。
数字だよ。
数字で割り切れるものであって、請求し終わったらそれでおしまいだ。
相手が難なく支払えるような金額しか取れなかった場合、
「怒って行動に出たところでこの程度w」と、かえってバカにされることだってある。
また、請求が終わった以上、それらの問題についての決着はそれで仕舞いだから、
逆説的に捉えれば相手に「これ以上の追求はない」と確約してしまっているのと同じだ。
これらの問題に対してどう対処すべきか。
それだったら、初めから請求なんかしなければ良い。
慰謝料は請求するだけが使い道じゃない。
請求しようと思えばいつでもできるという態度だけ見せて、
他の情報なんか一切、与えなければ良い。
そうすれば、「いつ請求されるかわからない」といったプレッシャーを、
半永久的に相手に与え続けることができる。
人間が最も恐怖を感じるのは、未知だ。
そうした方が、今後の相手との関係性で風上に立ちやすい。
たしかに、慰謝料請求権には時効がある。
法的な責任追及の観点から見たら、半永久的に、とまではいかないだろう。
しかしね、そんなのは関係ないんだ。
例えば、相手が会社を経営していたり、要職についていたりしていて、
体裁を気にしなければならないような立場であったとしよう。
相手がこういったタイプの人間であった場合、
人に慰謝料を請求されるようなことをしたという、その事実自体が問題なんだ。
そして、この事実は時効なんかで消えやしない。
一生、残る。
「いつ問題が噴出してしまうのか」
そう考えてしまったら、もう、夜も眠れないだろう。
人間なんて、そんなもんだよ。
・・・女でそんな要職にいるような人間は少ないだろうって?
たしかに、そうだ。
しかし、女は男と比べて体裁の事情が違う。
女は社会で根を張る生き物じゃない。
寿退社等、きっかけさえあれば社会から身を引くのを見ればわかるだろう。
それゆえ、周りからどう思われようが、
自分なりの正当な理屈をつけることさえできればそれで良いと考える。
ただし、社会的に悪者になることだけは承知できないんだ。
ちょっとニュアンスの違いがわかりにくいか。
要は一コミュニティ内での評価と、社会全体での評価に対する感じ方の違いだよ。
そういった面では、ある意味、女ほど体裁を気にする生き物もいやしない。
ポーズは見せる。
しかし、慰謝料は請求しない、あるいは敢えて受け取らない。
あくまでも相手にプレッシャーを与え続けるのが目的なのであれば、
そういった手段もある、ということは覚えておくと良い。
内容証明や訴訟等でバカ正直に請求したりなんかするよりも、
よっぽど今後の人生に根深いダメージを与えられる。
自分に対して理不尽な攻撃を加えてくる悪党がいたら、
そいつを自分個人にとっての悪党から、社会的な悪党にまで昇格するようにしたら良い。
ここで大事なのはどんな目にあったかよりも、
相手の方から不条理な攻撃を加えてきたという事実だよ。
そして、その攻撃の基となっている事情が、
なにかの権威や大きな肩書き、立場等を背景としたものであれば、尚、良し、だ。
別に攻撃を加えてきた張本人が「それ」である必要なんてない。
あくまで基となっている事情が、「それ」と関連付いてさえいれば良いんだよ。
必要なら攻撃に対して少々、オーバーリアクションをしたりするのも良いだろう。
「スジを通しているのに、一方的に傷つけられた」
その事実を大衆に分かり易いメルクマークとして残すことさえできれば、十分だ。
後は自分が直接叩かずとも、世間が叩く。
そして、その矛先が向くのは、何も攻撃を加えてきた張本人だけとは限らない。
その人物の身近にいる者から、直接は無関係だが攻撃によって間接的に利益を得た者まで、
要は大衆が牽連性を認識できるような関係にある人間全てに飛び火する。
請求したら、訴えたら、それで仕舞いだぞ。
うまく使えば、今後、一生涯に渡って相手の風上に立てるネタを提供してもらったんだ。
それが今後の相手との関係で、
自分にどれだけの優位性をもたらすきっかけとなりうるか、考えたことはあるかい?
もったいないじゃないか。
そもそも、慰謝料請求をするのは金が欲しいからなのか?
それなら、こんな話は聞いても仕方がないだろう。
今すぐ回れ右をして、弁護士のところにでも行った方が良い。
しかし、そうでないというのであれば、
実際に金銭を請求することにこだわる理由はないはずだ。
要は慰謝料を請求するってのは、「表向きの勝利」にこだわる人の手段なんだよ。
外向けの勝利宣言なんて、そんなに重要か?
僕はそうは思わないな。
ヒステリックなピエロ役なんてのは、女が演じてこそ意味があるんだ。
裏で相手のキンタマさえ掴めているのであれば、それで十分じゃないか。
まぁ、女にタマはないがね。
あと、最後にもう一つだけ付け加えさせてもらう。
他人との関係では、あまりはっきりと勝ち負けをつけることにこだわらない方が良い。
元々、離婚話が出ているくらいだ。
完全にお互いのことを考え、円満に話を進めていくことは難しい。
うまく纏まったとしても、良くてケンカ別れの形だろう。
しかし、表立ってタマの取り合いまでした末での別れ方は、
僕は断じて推奨しない。
勝ち負けをつけて、その場で気が済んだとしても、
後で過去の己の行動や思考の是非について振り返ることが必ずある。
2~300万くらいの金のために、
人との間で一生モノの「しこり」を残したことはかえって高くつくこともあるんだ。
・・・まぁ、これは請求する側だけの話ではないな。
払うべき慰謝料を踏み倒した側についても大いに言える事だ。
必ず、後悔する時が来る。
僕は自分の知見の及ばないことについては決して語らない。
どうか、綺麗事と思わず、真剣に聞いてもらいたい。
もちろん、例外だってある。
もはや個人の慰謝料なんてレベルじゃなく、
他の人間の利益も巻き込んだ損害賠償事案にまで発展しているようなケースだ。
実際のところ、男の離婚相談は自営業を営んでいる人からの相談も多い。
そういったケースの場合、相手に経理や顧客管理等の重要ポジションを任せていることも多く、
相手がとった軽率な行動によってかなりの額の損害が出てしまうような場合もある。
このような場合はそんな悠長なことも言っていられないだろう。
自分だけならまだしも、
従業員も食わせていかなければならない立場であるのなら、なおさらだ。
こういった場合は裁判まで視野に入れてトコトンやるのも悪くない。
いずれにせよ、慰謝料問題は請求する、しないの段階から、
ライフプランニングも含めたかなりシビアな検討が必要な問題だ。
妙な話だけれど、慰謝料請求はタダではできないからね。
今一時の感情だけでなく、
将来的な面も含めてどうすべきかよく考えた方が良い。
・慰謝料問題のワンポイント
復讐感情等で相場を大きく超えた金額の慰謝料を請求しても、
相手に支払うことができなければ意味がない。
かえって問題が長期化することになる。
相手からの要求がハードすぎて困っているというのであれば、
少々、工夫が必要だろう。
元々、請求される筋合いがあるのであれば、
反論なんかでは収まりがつくはずないからだ。
相手をより意固地にさせてしまうことになりかねない。
慰謝料請求はいわば責任の追求だから、
どうしたって心情という問題が絡む。
こういった場合は話し合い方や立ち回りの方が重要だ。
人の感情は、法律なんかでは変えられない。