面会交流の権利性と不当な拒否について
「面会の法律上の権利性と面会拒否事由」題目
1.「面接交渉は親の権利?」
2.「不当な面接交渉の拒否について」
書いた人
離婚・家庭問題はお任せください
行政書士明和事務所
行政書士 吉田 重信
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面接交渉権は特に法律で明文化されている権利ではありません。
「権」とついているがゆえに実親の権利であるかのように見えますが、
実は判例上では親権のない実親に面接交渉自体は認めていても、
面接交渉権は親の権利であるとはっきり明言しているわけではないのです。
面接交渉の権利性について判例では、親の権利としてではなく、
民法766条2項で処理される子の監護についての処分として扱うべきものと判示しております。
(最決平成12年5月1日 民集54-5-1607)
つまり、面接交渉権は親が権利を行使して子供に面会できるというよりも、
実親と面会させた方が子の利益になると言えるような場合及び、
面会させることによって子に不利益な結果を与えるような事情の無い場合に、
家裁の処分によって面会をすることができるという、
一部、消極的な性質を有している権利とも考えられるわけです。
ですから、仮に・離婚公正証書等に面接交渉についての記載があったとしても、
子供の身柄を強制的に差し押さえて面会を実現させるようなことは、基本的にはできません。
面接交渉の強制執行については親権者に追徴金を付加するなどの形で、
間接的に面会の履行を促す方法が採られております。
(間接強制といいます)
親権者が正当な理由なくして面会を拒絶しているような場合には、
家庭裁判所に申し立て、子の利益のために必要な処分をしてもらうことになります。
面接交渉は正当な理由なくして妨げられるものではありませんが、
実現には子の利益及び福祉にとって有害か否かが最優先で考えられるということです。
そのためにも、離婚の際には親権者に協力してもらうだけでなく、
離婚の意味や面接交渉について、子にもある程度理解をしてもらうことが必要ではないかと考えます。
親権者は理由もなく別れた相手との面会を拒否することはできません。
面接交渉権が判例上で親の権利と明言されていないとはいえ、
親権を持たない実親の権利の一つとして観念されていることには違いがないからです。
単に親権者が個人的に相手に会わせたくないというような理由では、まず認められないでしょう。
・相手が暴力をふるう
・養育費を支払う能力があるのに支払わない
・子供に親の悪口を吹き込む
・連れ去り、その他犯罪の恐れがある
・子供が面会を拒否している
男性の立場では、面会を拒否するよりも、拒否される立場の方の方が多いと思います。
上記のような正当な理由なくして親権者が子との面会を拒否する場合には、
内容証明郵便等で親権者に面会請求してみると効果的かもしれません。
なお、「子供が面会を拒否している」と親権者が主張するような場合には、
家庭裁判所に調停を申し立てるのも有効です。
親権者が子供と直接話をさせてくれないような場合でも、調停員が子に真意を聞いてくれます。
ただ、親権者が自分勝手な理由で面会を拒否している場合には、
子自身に面会を拒否させるために悪口を吹き込んで洗脳したり、
親族や友人と結託して、ありもしない既成事実をでっち上げたりする可能性もあるので、
不当に面会を拒否された場合はなるべく早めに対応をすることをお勧め致します。
ちなみに、正当な理由なく長い年月に渡って親権者が面接交渉を妨害し続けた場合等には、
親権者に対する慰謝料請求の根拠となりうる場合があります。
ワンポイント
面接交渉を行うことは親のワガママであるとは言い切れません。
なぜなら、定期的に実親に面会させた方が、
子供の情操教育上にも良いという場合もあるからです。
物心がついていないような時期に離婚したのであればともかく、
長い間一緒に生活を送り、子供が懐いているような場合では、
離婚という大人の事情でいきなり親と会うことが出来なくなったりすれば、
子供も混乱しますし、心身に対するショックも非常に大きいでしょう。
子供も親に会いたいと思っているケースは少なくないはずです。
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