父性を嘲笑する歪んだ正義感

父性を嘲笑する歪んだ正義感

 

 

父親としてのあり方って、どんなんでしょうね。

 

ここで正しいあり方、なんてのを論じたりするのは少々ナンセンスでありますから、
この場合は一般的な父親の姿勢を考察するのが適切かと思います。

 

昨今ではイクメンという言葉や育児休暇の取得等が話題になる等、
父親が子育てに積極的に参加するのが珍しくない世情であります。

 

しかし、本来的に父親というものはあまり子育てに対して熱心なものではありません。

話題になる、ということは、
そういったことの裏返しでもあると思いますので。

 

じゃあ父親は日頃、子と接している母親と比べて愛情が低いのかというと、
断じて、そんなことはないと思います。

 

親の愛情というものはずっとそばにいたり、
積極的に世話をしたりすることだけではないはずでしょう。

 

できうる限り不自由なく生活できるよう環境を整えたり、
いざという時がきても落ち着いて対処できるよう経済面を補強したり。

そうやって、一歩引いた立場から家族を見守るのも親の愛情の形の一つです。

 

男は特にそうだと思いますし、個人的にはそうであれ、と考えます。

 

 

僕も自分の子に対しては、そこまでベタベタ接したりする気はないです。

勝手に育ってろ、とまでは言いませんが、
少なくとも猫っかわいがりみたいなことはしないと思います。

 

まぁ親戚等、よその子に対しては甘いですがね。

無責任にかわいがれるのは他人の特権なので(笑)

 

差別的と思われるかもしれませんが、
そういったプロセスを経て、子に親と他人の違いを理解させるのも大切なことです。

仮に子がその場では不平、不満を持ったとしても、ね。

 

親として、子の人生に責任を負うというのは、
つまるところ、そういったことなのではないかと思います。

 

ところが、そういった父親特有の立場を母親が理解せず、
イクメンじゃない、愛情が感じられないと騒ぎ立てるような事例が近年増えてきているわけですね。

こんなのはまだかわいい方で、ひどいケースでは子をいきなり父親の元から連れ去り、
狼狽している父親を「無関心だったくせにw」と母親が嘲るような態度に出る事例も少なくなくありません。

 

そして、なによりも看過できないのが、
そういった世情を都合良しとして父性を矮小化するような論調に走る専門家(?)がいるということです。

 

いや、矮小化なんてレベルではなく、
無価値なものにしていると言っても過言ではないでしょう。

 

 

「夫は奪われた玩具を取り戻そうと意固地になっているだけで、
その動機は愛情とは無関係。家族や子のことなど考えてはいない」

 

 

センセー方の有り難いご高説が聞こえてきそうですね。

利己的な目的で家庭を扱っている者に家族を論じさせるとこうなる、
という良い見本だと思います。

 

実際、面会交流審判の答弁書等で似たような主張を書いてくる弁護士がゴロゴロいるわけですが、
なんかこういう対応の仕方が弁護士業界内でテンプレ化でもしてんすか。

 

日常の存在がいきなり目の前から消えたりしたら、動揺するは当たり前じゃないか。

そんな限界事例へと意図的に追い込んだ上で、
父親の苦悩の訴えに「急に大騒ぎしているだけなんですよっ!」とヤジ飛ばしするなんて。

 

個人的には万死に値する鬼畜の所業かと思います。

 

 

たしかに父性というものは対外的に目視されにくく、
他者からは評価され辛いものです。

故に父親としてもそこを突っ込まれた際に、
己の主義や正当性を証明する言葉を持たない場合が多いです。

 

近年で父親の子育てへの参加が世論として盛り上がっているのも、
つまるところはそういったことなのでしょう。

 

しかし、わかりやすい言葉や態度を投げかけるだけが人間ではありません。

 

 

言葉で語らず、態度に現さず。

そういったものに対して不安に思ったり、悲しく思ったり、時には怒ってケンカしたり。

 

そういった理屈で説明がつかない行動をするのも人間なわけです。

 

 

それを知り、理解することで人生がより豊かになることを子に教えるのは、
親としての義務であり、そしてなにより、楽しみでもあるはずです。

それは、愛情とは言えないのでしょうか。

 

 

子に不幸になって欲しい親などいない。

例外はあるのかもしれないが、
少なくとも日々、平穏に生活しているのは愛情が存在する証。

 

いたわり無くして、平穏無し。

 

それを理解しようとせずして、なにが親か。

 

 

人の愛情の有無を論じたり、それに優劣をつけたがったりするのは、
利己主義以外の何物でもないと思います。

 

 

2021.05.24 wrote

行政書士 吉田 重信

 

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