他人に対するNGラインは自らの首を絞めることになる
最近では人や世の中の出来事に対して、
やたらと線引きをしてしまうような風習が見られるな。
ドン引きとかカエル化現象とか、このラインを超えた人はNGみたいな。
そういう自分の中の価値観からちょっとでも逸脱した存在に対して、
自らブロックをかけるようなことをしてしまう。
一時期、ニュースにまでなったりしていたから、
ネット上とかだけでなく、一般社会上においてもそういった動きが見られるのだろう。
自分の友人関係や身内間でやっている内は、まだいい。
テリトリー内での好き嫌いは本人の自由だし、
その上で問題があるような態度を取っていれば周りが注意してくれたりもするしな。
問題はそういった身勝手なNGラインをまったく知りもしない第三者に対して、
公共の場で押し付けたりする人間も増えてきているということだ。
以前、確かネット掲示板かなんかで読んだエピソードだったと思うが、
ラーメン店内にて起こった出来事の話だ。
その人はラーメンを食べ終え、最後にスープを飲もうと器を口に運ぼうとしたら、
隣の席にいた二十歳くらいのサラリーマン風の男からこんな風に怒鳴られたんだと。
「ウツワに口つけんな!」
別にその店自体はそんなことを禁止なんかしていないし、
厳しい独自ルールのあるようなところでもない。
ただ単に、その彼の中では飲食店のどんぶりに口をつける行為がNGだったんだろう。
怒鳴られた人は腹を立てるとかよりも見知らぬ若い人にそんな風に怒鳴られたことに、
ただただ驚くことしかできなかったそうだ。
そりゃあ、そうだろうよ。
知らない人にいきなり怒鳴られたら、怒るよりもビビるわ。
僕がその人であったとしても、そうだな。
ウルセー!と怒鳴り返すよりも、「随分と、難儀な生き方をしているな」と、同情する。
これは、自分の許容できる世界が狭い証なんだよ。
それはすなわち、己が生きてゆける世界を自ら限定してしまっているということでもある。
余裕のない時代などと言われるようになってから久しいが、
他人に対する余裕のなさは自分に対する余裕のなさの成れの果てなんだよな。
少しのズレも許すことができない張り詰めた考えは、
自分の実生活に対して同じような感覚を押し付けているから外にまで出てくるんだ。
それが、一種の強迫観念みたいになってしまっている。
毎日、周りの全てが自分の思い描いた通りにちゃんと進まないとダメ。
それが内だけでなく、外にまでにじみ出たのがこういった行動につながっているわけ。
つまるところ、これはワガママの一種でもあるんだよ。
事例はあくまでもネット上の話だから創作の可能性は捨てきれないんだけれど、
事実かどうかはさておき、それに近しいことは起こっていると感じるような昨今の空気。
これはやはり、人が生きる社会の在り方としては不健全だと思うな。
そんなに厳しくなくても大丈夫だと思うぞ。
他人に対してもだけれど、自分に対しても、な。
外でやっていることが自分に返ってくる理が存在するというのならば、
どうしたらより良い人生を送れるかってのは、そんなに難しい話でもないと思うんだよ。
2025.05.17 wrote
行政書士 吉田 重信
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